泥棒・詐欺師犯罪例から考える防犯対策

実際にあった泥棒や詐欺のリアルな手口を犯罪者側の目線で物語風にご紹介。犯罪から身を守る手法を身につける参考にお役立てください。

不正な方法でパチンコパチスロで抜くゴト師打ち子の収入は自己申告だが不正がバレると罰金100倍

私見で言うならば、一介の人間
がパチンコやパチスロで生計を立
てる方法は3つしかないと思う。


1つはホールの従業員になるこ
と。毎月給料が支給され、店によ
っては住居まで面倒を見てもらえ
るので、最低限の生活は営めるだ
ろう。


もう1つは、台のメーカーに就
職すること。大手の社員ともなれ
ば、そこそ烏値福な生活が送れる
に違いない。


そして最後の1つがパチプロに
なること、ではない。朝早く起き
て新装開店に並び、釘を読んで、
回転数をチェックし、かつ資金を
管理するなんてことは普通の人間
にはできやしない。
そう、最後の1つはゴト師にな
ることだ。

ゴト師とは、一言で言えば不正な方法で玉やコインを抜
く人間を意味する。

不正、という点が引っかかる人は多いだろうが、
これもまたこの業界で確実に糧を得る手段の1つだ。

僕は現在25才。中学卒業以来つ
い最近まで、常にパチンコ・パチ
スロのゴトで食べつないできた。


とはいえ、それはゴト師グループの中心的存在にいたからというの
ではなく、流れに身を任せるうち
にそうなってしまったというのが実状だ。


単なるパチンコ好きの僕がいか
にして悪事に手を染めるようにな
ったのか。その一部始終を紹介しよう

町田市で僕は生を受けた。親父が小さな電気
部品工場を営んでいたおかげで、
幼少期より比較的裕福な生活を送
れはしたが、それが裏目に出たの
か、地元の公立中学に入学するこ
ろには、タバコとシンナーを少々
たしなむ程度のちょっとした不良になっていた。


初めてパチンコ屋に入ったのは、
ちょうどそのころ。当時、周りの
貧乏連中の倍近い月額5千円の小
遣いをもらっていた僕にとって、
パチンコという遊びはそれほど魅
力的な遊びとも思えなかったのだ
が、付き合いでやってみたところ、
その「ビッグシューター」という
台は、どういうわけか簡単にVゾ
-ンに玉が入り、小さなドル箱1
杯分、約2千円が瞬時に手に入っ
たのだった。


こうなりや自制心の利かない中
学生が通い詰めにならないわけが
ない。学校へも行かず、昼過ぎに
起きてはパチンコ屋に向かってコ
ッコッと小遣いを稼ぐ毎日が始ま
った。
もちろん当時はこの世界で食べ
ていこうなんて腹はさらさらなか
ったけれど、この世の中は働かな
くても食っていけるんだとぼんや
り認識し始めたのは確か。親が汗
水垂らして会社を切り盛りしてい
るというのに、息子がこれだから
困ったものだ。



中学卒業時、ご存知のように渋谷でチーマーと
呼ばれる愚連隊の活動が全盛で、
僕も友人に誘われる形で、あるチームに属していた。
ただ僕のいたチームは、何をす
るでもなく、ただ街中でだべって
るだけ。抗争なんてカッコイイこ
ともなければ、クスリをさばくこ
ともない、いたって健全なグルー
プで、しかも揃いも揃ってパチス
ロ好きという実に軟弱な集団だった。


その中の1人に、上野のパチン
コ店にしょっちゅう出入りしてい
る男がいたのだが、ある日、そい
つが常連のおっさんにパチスロ必
勝法の情報を売ってやると持ちかけられたとしゃべり出した。


情報料は20万円。カツあげにも
薬物にも縁のない我が軟弱チーム
にはおいそれと手の出せる金額で
はないが、いつもコインを山積み
にしているおっさんだから信用し
てもいいだろうとの提案が決め手
となり、いつちよ乗ってみようと
の結論が出た。


普段はただまったりしているだ
けのひ弱なチーマーも、ことパチ
スロとなると恐るべき結束力を発
揮する。パーティ券などというワ
ケのわからないものをさばいてな
んとか20万円を工面した僕たちは、
いざ上野のおっさんの元へと出向いたのだった。


と、このおっさんが教えてくれ
た情報というのが、バカでもでき
るほど簡単な攻略法だった。
本来、スロットは3枚コインを
投入してスタートレバーを押すの
だが、おっさんのやり方はスター
トレバーを押す瞬間に4枚目のコ
インを投入するというもの。

ヨンチネンタルにしか通用しないが、タイミングが合え
ばこれだけで確実にビッグポーナ
ス(大当たり)が来るというのだ。
とても信じられないので、試し
にやらせてみると、おっさんは難
なく7をそろえてしまう。

ひょっとしてあらかじめビッグを入れてあ
ったんじゃないかと(パチスロに
は大当たりだけど絵柄が揃ってい
ない状態というのがあり、これを
ビッグの入った状態と呼ぶ)、隣
の台でもやらせてみたら、こちら
もすぐにスリーセブン(777)。
僕たちは目を白黒させながら、
約束の20万円を手渡し、さっそく
上野の別の店で試してみた。と、
これが出るわ出るわ。ピアスに茶
髪の5人組だけが大爆発させてい
る様は圧巻の一言だ。
その後も毎日のようにパチスロ
台に向かい続けた僕たちチーマー
は、各人それぞれ月に200万円
ほど勝ちまくり、財布に万札30枚ほどを忍ばせては渋谷で散財しま
くった。
この「4枚がけ」と呼ばれる方
法は、コインセレクターという部
品の異常によって可能だったらしく、僕たちが知ってから3カ月ほ
ど経ったころにメーカーが気付き、
全台回収の憂き目となる。
しかしコンチネンタルがな
くなっても食い扶持はなくならなかつた。上野のおっさんが次々に
情報を売ってくれるからだ。


当時のパチスロというのは、簡
単な方法で攻略できるものが多か
った。「リノ」という機種には、
精算ボタンを押しながらスタート
ボタンを押すポロリンセット(コ
インが1枚ポロリンと出てくる)
があったし、「スペーススペクタ
ー」や「スペースバトル」には、
同じような方法で行うバフセット
(パフつと音がする)があった。


専門雑誌でその手の攻略法が紹
介され、公になった時点で即使え
なくはなっていたが、僕たちの耳
に入ってくるのはその数カ月前。
たんまり稼がせてもらうことができたのだ。

しかし、我が世の春は長続きし
なかった。パチスロが4号機と呼
ばれる新しい基準に切り替わった
ことがきっかけだ。
4号機とは、射幸心の煽りを抑えるためにギャンブル性を低くし
たもの。つまり大きく負けない代わりに大きく勝つこともできない

ようになったのだ。
まあ、ただそれだけなら良かっ
たのだけど、この4号掃機にはそれ
までのような誰にでもできるよう
な攻略法が一切通用しなくなった
ことが痛かった。僕たちは楽をし
て勝つことに慣れていたので、4
号機用の技術を必要とする攻略に
はどうにも馴染めなかったのだ。
ところが悪運は尽きず。ちょう
どそのころ、都合よく、中学校時
代の後輩の1人が「セットゴトの
打ち子をやりませんか」と提案し
てきたのだ。
セットゴトとは、台の裏にある
正規ロムを、「ある手順で打つと
大当たりが来る」という裏ロムに
取りかえて不正に玉を出すことで、
今までのスロットの攻略とは、方法が根本的に違う。
喜んで同意した僕は横浜のファミレスで、グループトップの面接
を受けることになった。現れた主
犯格は、まだ30代前半のスーツ姿の男である。
説明によれば、グループの大元
がヤクザで、店のオーナーとつな
がりがあるとのこと。勝ち分の一
部がオーナーに回されるため、税金対策として機能するわけだ。

ただし、店長や従業員レベルの人間
は一切このことを知らないらしい。
茶色のロン毛にヒゲを生やして
いた僕の姿を見て、男はまずヒゲ
を剃れと言う。
「お前、貧乏でヒゲを伸ばしてる
よりは、ヒゲ剃って金になるほうがいいだろうよ」
「はい」
「あと、その頭も目立つから帽子をかぶれ」
「はい」
素直に返事をして、晴れて打ち子グループに迎え入れられた僕は、
そのとき20才だった。

さてこの打ち子のシステムだが、
まず、どこでどう仕込んだのかは
知らないが、裏ロムの入っている
のは店にある全30台ほどの「大工
の源さん」の中の8台。そのうち、
打ち子が実際にゴトを行うのは1日につき4台のみだ。


当日の朝に「今日はこれとこれで行くから」と台番号が伝えられ、
午後1時から5時の中番と、6時から10時までの遅番に分かれて打ちに行く。
ただし、裏ロム台だからといっ
て誰がどう打ってもジャンジャン
勝てるわけではなく、打ち方に決まりがある。
あまり詳しくは書けないが、中出目に「ヘルメット」が出たら
秒打ち出しを止め、その後で2発だけスタートチャッカーに入れて
…という複雑なもの。こうして初めて碓変が引けるのだ。
碓変を自由に引けるのだから、
その気になればいくらでも出せる。
ただし、常連客や店員に怪しまれ
ないよう、金額にして6,7万円分でストップするのが決まりになっていた。
中には、確変がいつまでも止ま
らなくて出してしまった男がいたが、後でこつぴどく叱られていたようだ。
このゴトは、途中で打ち出しを
数十秒止めなければならず、かと
いって席を離れると不審がられる
ので、僕たちはハンドルを握る格
好をしながらも手は触れないとい
う姿勢で、その数十秒を凌いでい
た。隣の客はさぞ不審に思ったことだろう。

勝った金は、駐車場で待ってい
るトップの人間に持っていき、い
くら使っていくら出したかを申請
する。差し引き、すなわち純利益
の3割が僕たち打ち子の収入だ。
早番遅番2回入ると、だいたい1
日で4,5万が手に入った。
報告は自己申請だからいくらで
も嘘はつけそうなものだが、トッ
プとオーナーがツーカーなのでデ
ータを照会されたら一発でバレてしまう。

ある男は、8万円勝ったところを6万円と由請していたの
が発覚し、差額の100倍、200万円を要求されたという。
結局、ホール主任に発覚してロムが正規のものに入れ替えられる
までの半年間、グループ全体で抜いた額はおよそ1億円にまで上った。

「源さん」ゴトが終わり、安定し
た収入のなくなった僕だが、真面
目に働こうといま2気にはさらさら
なれず、またもや後輩の持ってき
たおいしい話に身を乗り出すこと
になった。あるパチンコ店の従業
員が、設定6のパチスロ台番号を
リークしてくれるというのだ。
パチスロ台には1から6までの
設定というものがあり、設定1だ
と大当たり確率が300分の1程
度なのが、設定6になると160
分の1ほどまでに跳ね上がる。こ
れで勝てなきゃおかしいというレ
ベルが設定6だ。
どこの店でも閉店後に、今日は
この台が設定6だから明日はあの
台を、というふうに設定を変更し
ているのだが、その設定変更をし
ている従業員が勝ち分を半分渡す
という条件で情報を漏らしてくれ
るというのだ。
そんなにウマイ話があるものか
と一度は疑った僕だったが、冷静
に考えてみれば、ありえないこと
でもない。どうせ誰かが設定6の
台に座るぐらいなら、その従業員
にしても知人に座らせて分け前を
もらったほうがいいに決まってるのだ。
こうして僕たち2人は毎朝電話
で教えられた台に座っては、この
台は設定6だから、この台は設定
6だからと念じながら打ち続けた。

そこそこの勝ちを収めたことから
も偽情報ではなかったみたいだ。
しかし、そんなウマイ状態が長
続きするはずがない。いつもいつ
も勝っている僕たちの存在に店長
がおかしいものを感じたのか、設
定変更をしていた店員がクビにな
りすべてがパーになったのは、わ
ずか3カ月後のことだった。

しかしどういうわけか、こうい
う業界に足を突っ込んでいると、
1つ仕事がなくなればウマイ具合
にまた別の仕事が舞い込んでくる。
今度は源さんでゴトをしていた
ときの知人が、「ファインプレー」
というパチンコ台を電波で攻略す
る機械を買ったから、1日1万円で貸してやると言ってきたのだ。
「ふ-ん、電波ゴトつすか」
前々から電波ゴトの話は聞いて
いて一度はやってみたいと思って
いた僕は、さっそく借りうけることにしたのだった。
ただしこの機械、台に向けて電
波を発信して大当たりを生むという簡単な仕組みながら、作業が
少々ややこしい。
まず、握りこぶし大の本体を腰
に、スイッチを太股に、そして電
波を発生させるコイルは左腕に巻
いたサポーターの中に隠す。そし
て左腕を台にくっつけた状態で、
右太股のスイッチを押さなければ
ならないのだ。
そもそも左腕を台にくっつける
格好というのは、パチンコを打つ
ときの姿勢としてはあまりに不自
然。最初は上皿にヒジを乗せてか
ったるそうに打つことでゴマかし
ゴマかしやっていた僕も、しまい
には左腕で台を叩きながらスイッ
チを押すという強引な手に打って
出て、しばしば店員に注意を受け
るのだった。
そしてこれが一番肝心なのだが、
「ファインプレー」はいわゆる平
台なので、1回打ち止めにして1
万円にしかならない。同じ店で何
台も打ち止めにするのもマズイん
で他をあたってみるんだけど、設
置している店は結構少なく、1日
かけて2万円にしかならないこと
もままあった。レンタル料を取ら
れたら手元に残るのは1万円。

こんなはした金のために、いつ捕ま
るとも知れない電波ゴトを続ける
のは割に合わないと、ひと月も経
たないうちに僕は機械を返却した。
しかし、その男との付き合いは
まだ続く。今度は、スロットの設
定を変更できる機械があるからど
うだと言うのだ。
「なあ、設定6っておいしいのか?」
「ホントだったらおいしいつすよ」
「それじゃあ、打ってくんないかな」
という具合に話はトントン拍子
に進み、機械を購入して僕に手渡したのだった。
使い方は面倒くさいので省略す
るが、とにかくこの機械は台の電
源を1回落として再び立ち上げる
というもの。「ヴァーサス」「花火」
といったパチスロ台は、電源を入
れたときに設定6で立ち上がるた
め、電源のオフ、オンだけで十分
攻略できてしまうのだ。
個人的にも、常にビクビクしな
きゃならない電波ゴトよりは、1
度設定6にして後は普通に打つだ
けの方が精神的に楽チン。僕はい
ざ横浜のパチスロ専門店に向かい
「ヴァーサス」に腰掛けた。
ところがである。電源を落とし
て、再び立ち上げるところまでウ
マクいったかと思えば、なんと大
当り終了後にエラーが表示されて
しまうのだ。別の台に移ってトラ
イしたところ、またまたエラー。
そう、このゴトはも?すでに対策
が立てられていたのだ。
90万円の機械は1円も回収する
ことなく、ゴミとなった。