泥棒・詐欺師犯罪例から考える防犯対策

実際にあった泥棒や詐欺のリアルな手口を犯罪者側の目線で物語風にご紹介。犯罪から身を守る手法を身につける参考にお役立てください。

実際に車やバイクにひかれる体当たりな当たり屋

故意に交通事故の被害者となり示談金と称して力ネをだまし取る古典的サギ当たり屋

オレはかれこれ25年以上、その当たり屋で小遣い稼ぎをしてきた男だ(正業は自営業)

70生代後半、当たり屋はボ口か った。なんせ、ターゲットの車か現れたら、物陰からサッと飛び出し、サイドミラーにワザと自分の手をぶつけるだけ。手首をネンザ したと言って治療費(12万円 程度)をいただえてしまえばいい のだ。

仮に相手が警察を呼んだところ で、ヤツらは民事不介入のため、 せいぜい事故状況の確認をして終 わり。こちらが穏やかに示談の姿勢を示している限りは平気だ。

また保険金を使うならそれはそれでオッケー。いやむしろ大歓迎 というべきか。治療に示談金が入り込み、10万にも20万にも なるのだ。

唯一の注意点は、交渉中、恐喝めいた言動をとらぬことくらい。 欲をかかず、ムチャさえしなければ、これほど発覚率の低いサギもなかつたのである 

ところが、80年代に入ったころから、この当たり屋天国に陰が忍び寄ってきた。

最大の理由は、全国で爆発的に当たり屋が増え、世間の警戒心が強くなったことだ。

つまり手をミラーにぶつけた程度でケガをしたと騒いでは、逆に不審を抱かれるようになったのだ。

しかも警察に通報される頻度も高くなり、当たり屋なので はないかとマークされる有様である。

所轄を飛ひ越え、 他府県で当たり屋行脚をしているのであれば、 さほど恐れるこ ともないが、仕事上の都合でそう もいかぬオレにはかなりの打撃だった。

ダメ押しは保険屋審査が格段に厳しくなったことだろ う。なんだかんだ理由をつけては 治療費以上の支払いを拒否してく る。一時は、オレも本気で当たり 屋かり足を洗おうと考えるほどだった。 
もはや実際に蝶かれるしかない 
ところが、そのままスネてしま わないのかオレのいいところ。し ばらく悪さから遠のいているうち、 
あるアイディアがーつ、ポッと浮かんだのだ。 実際に自分の足をタイヤで蝶かせればよいのではないかー。

警察は怖い、保険屋はシブチン。

そんな状況下、安全で確美な方法は、もはやターゲットの人間から 直に力ネをもらう以外にない。

そのためには、相手に加害者意識を ハッキリと自覚させ、こちらが当 たり屋だと悟られぬことが肝要だ。

とはいえ、車へ体当たりをかま しては、ソッコーで救急車やパトカーを呼ばれるし、第一、毎回大ケガしていたのでは元も子もない。
だが、足を蝶かれれば、相手の罪悪感を煽り、なおかつ警察を呼ぶほどの騒ぎにならぬハズだ。
そこでさっそく白のスニーカーのつま先に厚さ5ミリの鉄板を仕込み(本当にケガするワケにはいかない)、さっそく当たり屋ならぬ踏まれ屋を実践してみたところ、これがけつこう上々なのである。
狭い生活道路。左車線で信号待ちしているバイクと車のわずかなスペース。そんなところをフラフラ歩き、すっとタイヤに足を蝶かせる

その瞬間「あ、痛てえ」と叫べばよい。

驚いた運転手はたいてい、急プレーキをかけ、こう言う。
「だ、大丈夫ですか?」
で、タイヤの跡の付いたスニーカーを指さしながらオレ。
「もうアンタ、何してくれんねん。足の指おかしなって、よう歩けへんやんけ」
ここで加害者が110番をかけるのではなく「病院に行こう」と言ってくればしめたモノ。あとはいつもの通り、
「いや、アキませんのや。今からめっちゃ大事な用があるんですわ。自分で病院行きまっさかい、治療代だけいだだけませんでっしゃろか」

こうしてまんまと力ネが転がり込んでくるというワケだ。

相場は 5千円12万円ってところか。 踏まれ屋として、事故現場で一 気に勝負をつけるようになってからは、成功率を少しでも上げるため、獲物のチョイスにも気を使うようになった。

狙うのはもっぱら高齢者と外国人だ。思わぬハプニングで混乱しがちな老人たちは言うまでもなく、ワケありの事情を抱えた連中の多い外人どもも、警察に通報する可能性はかなり低い。

そんな事情が関係しているのかどうか知らないが、力ネ払い額、どちらもピ力一なのが、イラン人なのは何ともおかしな話だろう。

オレはいまでも踏まれ屋を続けている。25年間、一度も捕まらず、やってこれたのはムリせず細々と営業してきたからに他ならない。

パチンコをしたいとき、寿司屋に行きたいとき。そんなちょっとした小銭が要るときに打って付けなこのサギ、捕まるまで止めるつもりはない