泥棒・詐欺師犯罪例から考える防犯対策

実際にあった泥棒や詐欺のリアルな手口を犯罪者側の目線で物語風にご紹介。犯罪から身を守る手法を身につける参考にお役立てください。

ゴト師の情報を盗んで打つ泥棒という手口・ゴト師の身内のトラブルは命に係わる

ゴトの最終形態は、ゴト師グル
ープの情報を盗んで連中のいない
スキを狙って打つ「泥棒」という手口だ。
一般の人にとってはグループに


属するゴト師も泥棒も違いはない
だろうが、この業界では泥棒とい
うのは最も忌み嫌われる人種で、
ひどいときには殺人にまで発展することがある。


そして、この泥棒、やはりとい
うべきか、やってみないかと僕に
話を振ってきたヤツがいる。
そいつは中国人を中心としたあ
るゴト師グループに所属していて、その情報を流すから打ってくれな
いかというわけだ。
その一線だけは越えてはいけない。

冷静な頭ならばそう考えただ
ろうが、働かずにゴトだけで暮らしてきた者にそんな判断はできな
かった。

もう、泥棒でも何でもや
ったるわい、と半ばヤケクソ気味
に僕は提案を引き受けたのだ。
毎日、どこそこの店の何番台にセットロムが入ってるからこうや
って打てと指令が入り、遠く埼玉
や三浦半島まで足を伸ばしては数
万円を「盗み」まくった。
しかしそのゴトも突然、終了を
迎える。
その日、埼玉県某所のパチンコ
店でいつものように泥棒に励んで
いると、コートを着た人間が後ろ
にずっと立ってこちらを見ているのだ。
僕は店外に出て、情報屋に連絡
を取った。
「ねえ、なんか見られてるんだけど、ヤバクない?」
「今日はいないはずだから大丈夫だよ」
「あ、そう」
グループのメンバーが大丈夫だ
と言ってるのだから大丈夫なんだ
ろう。僕は台に戻って再びハンド
ルを握った。
と、だんだん周りを取り囲む人
間が増えている。数えてみるとな
んと総勢12人。しまいには隣の台
にも座ってじっとこちらを見てく
るじゃないか。顔つきを見るに、
どうやら中国人。こりやマズイ。
僕は後1回確変が残っているので、ノーマル柄で当たったら終了
して帰っちゃうことにした。これ
以上長居はできない。
ところがそんなときに限って次
の当たりは確変の「7」。僕はド
ル箱を山積みにしたままトイレに
行くブリをして裏口から飛び出し
た。もったいないけど命を落とす
よりはマシだ。
もう、こんなことをやってちゃ
いけない。そのとき僕は初めて思った。

濡れ手に粟みたいなことをやっ
てたんだから貯め込んだだろ
うと思われるかもしれないが、実
はこれが面白いように全然残って
いない。何のために危ない橋を渡
ってきたのかと問われれば、それ
はやはりこの世界が好きだったか
らと答えるのが正解だ
僕は今、おろそかだった勉強を
やり直そうと通信制の高校に籍を
置いている。パチンコとスロット
ばかりの生活にはもうオサラバ…
と言いたいところだが、実はちょ
くちょく打ちに行っている。勝っ
たり負けたりの連続だけど、これ
がなぜか面白いんだな。