東京はともかく、地方都市じゃ未だにチーマーはモテまくり。こ
こ数年でヤシた女も100人じゃ利かない。
不思議なことに、このチーム内ではナンバと同じぐらい麻雀が盛んだった。たまり場の家に4人揃うと必ず徹マンに突入。誰かがブッ倒れるまで打ち続ける。
大敗を喫したのは、そんなある日のことだ。必死で女どもから金をかき集めたものの、あと5万円がどうにも用意できそうにない。
「ギャンブルの負けはその日払いがルールだからな。淀を破ったらどうなるかわかってるだる」
リーダーは本気だった。普段の結束が固いぶん、徒破りにはトコトン厳しいのだ。
うまい金の調達法が浮かばないまま街をさまよい3時間、途方に暮れ駅前のロータリーにたどりついたのは夜の8時過ぎだった。と、そこに1人の女性が通りすぎる。かなりカワイイ。
が、それ以上にカバンに目を奪われた。なんとエルメスのケリーバッグだ。ディスカウ
ントショップでも、10万は下らないだろう。
あの女なら5万ぐらい持ってるんじゃ…。そう思ったが早いか、
僕は彼女に走り寄った。
「ねえ」
「。。。」
「ねえってば」
「…なあに」
「ヒマ?」
「そうでもないけど」
「いいじゃん、どっか遊びにいこうよ」
「え-、でも」
満更でもなさそうだ。聞けば仕事帰りで、この後の予定はないらしい。強引に居酒屋に誘うと、案の定「ちょっとだけなら」とくっ付いてきた。
「はじめまして-」
近くの居酒屋に入り、まずはビールで乾杯。
「どこに勤めてんの?」
「×××」
地元で有名な商社だ。間違いなく給料はいい。
「ホラ、飲みなよ」
「私そんなにお酒強くないから」
「ダメダメ、一気」
コンパノリでガンガン飲ませるが、なかなかスキを見せない。目
つきはトロンとしてもカバンをしっかり脇に置いている。
そのうち、店員がラストオーダーを取りにやって来た。もう哩時か。ここはいったん外に出るしかない
「ね、どこか泊まらない」
商店街のアーケードにさしかかったところで、ホテルに誘った。
ナンパされた時点からこの展開を予期していたのだろう、彼女もスンナリ腕をからめてくる。
ラブホテル(料金後払い)で一発終えると、酔いも手伝ってか、女は間もなく寝息を立て始めた。
チャンス!
起こさないよう、そっとベッド
から抜け出し、カバンを開ける。
と、ヴィトンのサイフに1万円札
が5枚。まるであつらえたような金額だ。
何の迷いもなく、金を懐に入れ部屋を出る。その足で僕がリーダーの元に向かったのは言うまでもない。
この日以来、僕の中でナンパと盗みはワンセットになった。なんせ毎日のように女を引っかけているのだ。心と身体を許す相手なら、スキを見せるチャンスも少なくない
デパートの前でゲットした主婦をハメたのは、最初の犯行から2日後のことだ。
ねえ、私、洋服が買いたいのよ・悪いけど付き合ってくれなど
なんだよ面倒くせえな、とは思ったものの、おくびにも出さず
「ちょっとトイレに行きたいんだけど」
「あ、そう、じゃカバン持っててあげるよ」
「ホント、ありがと」
次の瞬間、ダッシュで逃げた。
アンタ、見ず知らずの人間を信用
しちゃいかんよ。
置かれたヴィトンのバケツを足でまさぐり(運良くサンダル履きだった)、親指と人差し指の間にサイフを挟み、そのまま自分の方へ。不器用な僕でも、これぐらいの芸当はへでもない。
パーキングエリアに車を停めていた女からパクったこともある。
車内にプーンと漂う強烈な酒の匂い。飲み過ぎたのだろう。ダッシュボードの上の小さなポーチを掴んで、そっとドアを閉めた。サイフには3万円が入っていた。
もちろん、みながみなここまで無警戒ってわけじゃない。居酒屋で箸ったはいいが、結局、目的を果たせない。
しかし悪知恵の働く僕。間もなく素晴らしいアイデアが閃いた。
そうだ。ヤシてるとき(フェラチオでもいい)は誰でも目を腹る。このスキにサイフを盗めばいいのだ。
これならカーセックスのときはもちろん、カバンさえ近くにあればラブホでも十分使える。
いや、何も難しいことじゃない。
ウソかホントか知らないが、「女は男の倍気持ちイイ」と聞く。
そんだけ感じてりや気づくヒマなどあるまい。
実際、この狙いは見事に的中し、サイフがパクリ放題。100人斬りのワザはダテじゃない。と、言いたいところだが、一度だけ、突然女がパチリと目を開けたことがある。
「なにやってんの?」
「いや、コンドームどこかと思ってさ」
どうやら手元までは見ていなかったらしい。まったく、冷や冷やもんだ。