泥棒・詐欺師犯罪例から考える防犯対策

実際にあった泥棒や詐欺のリアルな手口を犯罪者側の目線で物語風にご紹介。犯罪から身を守る手法を身につける参考にお役立てください。

泥棒・窃盗犯になったきっかけ・手口と半生を語る

「俺、泥棒やってるんだけど、取材する気ない?」
昼下がり、編集部に電話をかけてきたその男は間違いなく本物だった。オーラが強烈に発散されていたのだ。


1週間後、某地方都市の駅前・約束の場所に現れた
坂下氏(仮名)は、純朴な好青年ヅラをしていた

ヤバイ稼業に手を染める人間ほどフッーに見えるという法則は、ここでも生きていた。

「いやあ、こんな田舎までワザワザ来てくれるなんて
嬉しいなあ.ほら、俺、いつ塀の中に入るかわからない
でしよ.遺書じゃないけど、自分の半生を文章にして
もらいたかったんだよね」


取材のために入ったカラオケボックスで、マシンガンの
ようにまくし立てる坂下氏.その落ち着きの無さは、
まるで燥病のソレを連想させるほどだった。

 

もともと俺東北の生まれなんだよ。それが小学校3年のとき、オヤジの仕事の都合でこ
こに越してきたの。
転校先は1学年200人以上も
生徒がいるマンモス枝でさ。方言
丸出しの転入生なんか、格好のイジメの標的になっちゃうんだよね。


プロレス技はかけられるわ、上
履きの中に画鋲が入ってるわ。給
食のコッペパンには鳩のフンまで
乗つかってたからね。不登校にな
るなって方がムリってもんでしよ。
唯一、仲が良かったのは隣の家
の小学1年生。というか、同い年
の連中は誰も相手にしてくれなか
ったし、そいつしか遊び相手がいなかったんだよ。


で、ある日の夕方、いつものよ
うに2人で隠れんぼやってると、
たまたま玄関が開いてる留守の家
を見つけてさ。ちょうどいいやって、隠れることにしたの。


都会じゃ信じられないかもしれ
ないけど、田舎にはこんな不用心
な家がゴロゴロしてんだよね。ウ
チの親も、玄関に漬け物石置くだ
けでカギも掛けずに外出しちゃうぐらいだし。


まさかそいつも俺が見す知らず
の人の家に隠れてるとは思わなか
ったんだろうな。いつまでたって
も見つけに来ないから、ああヒマ
だなって、家の中を探検することにしたんだよ。


で、そのとき、洋服ダンスの奥
に茶封筒を発見しちゃったんだよ
な。恐る恐る中を開けてみたらシワシワの紙幣がびっしりでさ。全
部で10万円ほどあったんじゃないかな。
もう心臓はバクバク、ノドもカラカラだよ。ってことは、その札
を見た瞬間から、「盗ろう」って
考えてたんだろうな。実際、当た
り前のように千円札を1枚ポケットの中に入れてたもん。

それからはもう毎日のようにそ
の家に忍び込んだ。「悪いことし
てる」なんて意識はカケラもなかったなあ。
金額も1千円が3千円、3千円
が5千円、5千円が1万円って段々
エスカレートしていって。結局、50万円以上パクッたんじゃないか。


もちろん、そんなことしてりや、
家主も気つくって。2週間もしな
いうちに、ドアにカギがかかるようになったからね。


で、まあ普通ならここですっぱ
り手を引いてもよさそうなもんじ
ゃない。けど俺は、この後も風呂
場のサッシをこじ開けて侵入した
んだ。結果を言えば、その一件で彼の
悪事はバレてしま恥あらかじめ
マークされていたのか、家に侵入
して間もなノ、家主が帰宅。逃げるヒマもなかったらしい。


「ソッコーでパトカー呼ばれちゃ
ってさ◎家に帰るとオヤジにもボ
コボコ。『もうこんな真似は二度
としません』って泣きながら謝ったよ」


が、そんな誓いはもろくも崩れ
去る。金を盗むとい気並必事を働い
たときのカタルシスがすでに体に染みついていたのだ。
彼が再び盗みを働いたのは、それから1週間後のことだった。当時、スケートセンターにインベーダーゲーム機があって。それが子供の目にも、コイン投入口の
後ろがキャッシュボックスになってるってわかるわけ。


もうそうなると我慢できないん
だよね。次の日、家から持ち出し
た釘抜き使って、中の金をかっぱらってた。


万引きなんかもう日常茶飯事。
アイスクリームが食いたくなりや
駄菓子屋でくすねるし、靴に穴が
開けば靴屋で新品と履き替えてくるしね。
欲しいからかっぱらう、というよりは、とにかく盗むってことが楽しくて楽しくて仕方ないって感じかな。ま、それは今も変わりないんだけどさ。本格的に泥棒稼業に入ったのは、親元を離れて一人暮らしをするようになった18才のとき。マトモに働く気なんか一切なかった。


このころのメインは、いわゆる
車上荒らしでさ。ムリして買った
800万のベンツでアチコチ流し
ながら、路駐されてる車を見付け
て、中の金や物を頂戴するんだ。


なんでわざわざそんな目立つ車
でって思うだる。けど、よく考え
てみ。まさかベンツに乗ってるヤ
シが車上荒しだなんて誰も思わな
いでしよ。地味な車より断然仕事
がやりやすいんだよ。
最初のうちは、ドアロックをし
忘れた車ばっかり狙ってた。さっ
き言った家のカギと同じで、田舎
じゃそんな不用心な車が普通にあ
るからさ。


でも、それだとやっぱり荒らせ
る台数に限りがあって。すぐに道
目蚕隻哩つようになったのね。
まずガラス窓とボディの間にナ
イフを差し込んで隙間を作る。そこから先を丸くした針金を垂らしてドアロックに引っかければロックが外れるんだよ。


トラックの場合はもっと簡単。
運転席の三角窓の回りのゴムをカ
ッターでスーツと切れば、窓ごと
スポンってハズれるから、後は手
を入れてロックを解除すればいいだけだもん。


けど、そうやって車内に侵入し
てみると、中に運ちゃんが
寝てたことがあってさ。高くて外から見えなかったんだよね。
いきなりノソッと起きあがって、
「誰だあ」なんて寝ぼけ眼で言っ
てたなあ。きっと、トラック仲間
が起こしにきたとでも思ったんじ
ゃないかな。もう慌てて逃げた逃げた。


オートロックが主流になってか
らは、JAFが使ってる差し金を
パクッてきて、実戦でドアの開け
方を研究したよ。はじめは、「お
お、開いたよ」云う日はなかなか
開かねえな」なんて右母様だったけ
ど、次第にT社の車は「押す」と
かH社が「引く」とかわかってき
てね。今じゃ開けられない車なんて一つもないね。


もっとも、車上は苦労のわりに
大した金になんない。ほとんどの
車が数百円程度の小銭しか入ってないしね。これまでの記録だって1台万円だもん。リスクには全然見合ってないよな。いろんな田舎町に遠出して車上やりながら、ついでに金になりそうなものをバクってくるってのが俺のやり方なんだ。

例えば公衆電話。ほら、タバコ
屋の軒先とかに室内用の公衆電話
が置いてあるじゃない。あれを、
工業用の馬鹿でかいカッターで電
話線をブッダ切ってかっぱらうの。
一つの町で釦台ぐらいはイケる
かな。後部座席と荷台がいっぱい
になったところで、山の中に入っ
て1台1台開けていく。玉がほとんどだから、全部合わせても
いいとこ3,4万にしかならないけどね。


5年ぐらい前からは、学枝荒し
もやりだしたよ。これは、車で走
ってるうちにうっかり変な山道に
入っちゃったのがきっかけでさ。
そのとき、映画になりそうな小さな小学校にちょうど出くわしたんだ。


当然、窓ガラス叩き割って中に
忍び込んだよ。職員室には金目の
物はなかったけど、視聴覚室に8ミリビデオ数台、音楽室でもバイ
オリンみたいな弦楽器を見つけて
ね。質屋に流したら万円ぐらいになったな。


セキュリティはどうクリアする
るのかって。いや、くつに何の対
策もしてないよ。どうせ山奥の学
校なんか、赤外線センサーに引っ
かかっても、すぐには警径理云社の人間も来ないだろうし。
あと、神社の妻銭箱も狙い目だ
よね。仕事も、夜中、境内に忍び
込んで害銭箱を鋸でジーコンジー
コン切るだけでいい。費銭が回収
されたばかりだと数千円の実入り
がせいぜいだけど、ごっそり溜ま
ってりや十万単位になることだってあるしね。

ただ、ある神社に忍び込もうと
したら、境内に足を踏み入れた瞬
間、いきなり投光器でパーと光を
浴びせられたことがあって。たぶ
ん、赤外線センサーが不法侵入者
を探知すると自動的にそういうシ
ステムが働く仕組みになってたんだろうな。


まさにスポットライトを浴びた
って感じ。肢し過ぎて目の前が真
っ白でさ。方向感覚もまるでないんだ。


転びながら何とか逃げたけど、以来、神社には手を出さなくなった。あんな怖い思いはもう二度としたくないよね。ジュースとかタバコの自動販売機もやるよ。といっても、最初から開け方がわかるわけないじゃない。どうしようかと思ってさ。


で、とりあえず、川の近くの自
販機にワイヤー括りつけて車で河
原まで引っ張ってったの。バール
でコジってブッ壊せば何とかなるだろって。

けど、自販機ってえらく頑丈な
んだよね。いくらスッタモンダし
ても開きやしない。アッタマきた
から、灯油ぶつかけて燃やしちゃったよ。
この失敗があまりに悔しくてさ。
自販機の内部構造を調べるために、
俺、自販機メーカーに就職することにしたんだ。
どんな自販機でも開けられるよ
うになりや、町中に数え切れない
ぐらい貯金箱ができるでしよ。一
生、食いつぱぐれずに済むじゃん。


就職するぐらいの価値はあるよ。
働きだしてからは、もう必死に
なって自販機の勉強をした。で、仕事熱心なヤシだと思われたんだ
ろな。会社の先輩がまた親切に手
取り足取り教えてくれるんだよ。
結局、半年後に会社を辞めたと
きは、大概の自販機は開けれるよ
うになってたな。ま、これも努力のたまものっていうの(笑)。

自販機でオイシイのはやっぱり
タバコだろな。札を扱ってるから
抜ける金額も大きいし、パクるのもえらく簡単だし。
札の投入口のすぐ後ろがキャッ
シュボックスになってるタイプの
自販機があるのね。これのボディ
と投入口の隙間にナイフをスッと
入れてヒネれば、キャッシュボッ
クスがコトンと下に落ちるからさ。
あとはタバコの取り出し口から手
を突っ込んで金を取り出すだけ。
ホント、1分もかからないよ。

インタビューの途中、普段、仕
事に使っているというナイフを見
せてもらった。七つ道具もついた
ポヶットサイズの万能ナイフだ。
「ナンならちょっと、駅前の自販機で実践してみようか」
そ立言って、カラオケボックスから出て行こうとする氏を慌てて引きとめる。
「だって、あの自販機、けつこう入ってるよ」
「いや、そういう問題じゃないんですよ」
プロの技を見てみたいのは山々だが、犯罪の現場に立つのはヤバすぎる。ここは我慢してもらうしかないだろう。
「そうなの、残念だなあ」
渋々といった様子で腰を下ろす
坂下氏。まったく、冷や汗もんだ。牽才のころ、これまでとはちょ
っと違った盗みをやりたくなった
んだよね。ほら、人間、いつもい
つも同じことばかり繰り返してる
とだんだん飽きてくるでしよ。
そこで試したのが、事務所荒し。
プレハブ小屋の仮事務所とか、小
さめの土木関係のとこなら赤外線
センサーも付いてないだろうし、安全そうじゃない。
都合よく、ある田舎町の人気の
ない路地に小さな建築事務所があ
ってね。さっそく夜中、ガラス切
りで窓を開けて中に侵入してみたんだ。
社長室みたいな部屋に、釦セン
チ四方ぐらいのデカイ金庫を見つ
けたときは狂喜乱舞したよ。こりやン百万はカタイーうて。
ムチャクチャ重い金庫を苦労し
ながら台車で車まで運んで、次の
日の朝、人気のない河原に行って、
ダイヤモンド刃のベビーサンダー
でブッ壊したのよ。
ところが、入ってたのは書類だ
けで金なんか一銭もない。あのと
きほどガックリしたことはないね。
けど、リベンジのチャンスはす
ぐにやってきた。その3カ月後、
場末のスナックで酒飲んでたとき、
たまたまKっていう電告晶閏連の下
請け会社2浬中がいてね。盗み聞
きした話だと、どうも給料が手渡
しらしいんだな。
しかもその給料が、夕方5時ぐ
らいに無人の経理に置かれてるっ
ていうのよ・なんか、カウンター
の上の給料袋をいったん班長が受
け取って、それぞれの班員に配る
習慣なんだって。ってことは、そ
の時間にKを襲えば、連中の給料
をそっくり頂けるじゃん。
当日は、逃走用の車を近くに停
めて、正面玄関から堂々と入って
った。もし見つかったらオドして
やろうと、尻ポケットに包丁を隠
し持ってさ。
あらかじめアタリをつけておいた経理に入ると、連中の言ってたとおり中には誰もいなくて。カウンターにも、これまた連中のこと
ばどおり、「A班」「B班」とか書
かれた大きめの茶封筒が5つ置か
れていた。一つの封筒に7,8人の給料袋が入ってたかな。
この袋を鞄の中に放り込んでソ
ッコー逃げたよ。金?全部で500万ぐらいあったと思うよ。いかにも楽しげにボンボン飛び
出す窃盗話。聞いていれば、それ
は、「盗む」というより、手あた
り次第にという方がぴったりくる。
「俺、目についたものはとにかく
かっぱらわなきゃ気が済まないタ
チなんだよね。きっと、こんなタ
イプの泥棒も珍しいんじゃないのかな」
彼がこの肥年間で働いた窃盗の
合計は軽く1千件強。恐らく、そ
の被害総額もン千万は下るまい。
いや、もしかしたら、一ケタ位が
違っているのかも…。
「どうなんだろ、いちいち気にも
してないからわからないね。それ
にもともと俺、金のためだけに泥
棒やってるわけじゃないからさ」金のためだけじゃない、己の楽
しみのためにも悪事を側く彼は、
ざらに聖耕しい盗み″を試みる。車の修理工場を狙ったら、って
閃いたときはうれしかったね。工
場内の車はキーが刺さったままだ
から、バクるのも簡単でしよ。ベ
ンツとかの高級車なら、知り合い
のヤクザが100万ぐらいで買い
取ってくれるしね。
それと、修理工場ってのはセキュリティが入ってない場合が多い
んだよね。事務所には赤外線が取
り付けられてても、なぜか工場ま
ではノーマーク。要するに、侵入
してもまずバレないってわけ。
ただ、ああした商売は、仕事柄、
必ず大通り沿いにガレージを構え
てるでしよ。近所の人間に見つか
らないためには、必ず{曇干を進入
経路に選ばなきゃいけない。
で、最初に忍び込んだのが、国
道沿いの小さな修理工場。前の日
の昼間、ベンツが修理に出されて
るのを発見してたんだ。
けどこの工場の裏手が田んぼでほふくさ

泥につかりながら前進だよ、冬場だったし、もう寒くて寒
くて。ホント、凍え死ぬかと思ったよ。ただ、その見返りは十分すぎる
ほどあったんだよね。パクッたベ
ンツのトランクに銀色のアタッシ
ュケースが入ってて。嘘みたいな
話だけど、中に200万円も入っ
てたんだ。
名刺を見た限りだと、なんか県
会議員の車だったみたい。ベンツ
もグレードが高いヤシで、150
万で売れたしね。合計350万の
ポロ儲けだよ。
あとは田舎の駅もよく髪ったな。
駅員が数人しかいないようなとこ
ろは、終電が無くなってもシャッ
ターが降りなくてさ。駅員室のド
アも、いまだに木の引き戸だった
りするし、バール-本あれば楽勝
で侵入できるんだよ。
狙いはオレンジカードとイオカード。どの駅でも2万円分ぐらいはストックがあるからね。これを金券ショップに持ち込めばほぼ定価で買い取ってくれるんだ。
金をバクるのと全然変わらないんだよ。
もちろんこの俺が、それだけで済ますわけがなくて、駅長室のカギの束を使って、キップとかジュースの自販機の金も頂いちゃう。
やっぱり、入ったからには根こそぎいかないと。これまでで一番オイシかつたのは高速道路のパーキングエリアかな。夜中は閉まってる昼間営業のパーキングがあるじゃない。あそこを悪つんだ。
もちろん、正面切って高速道路から忍び込んだりしない。高速の下に車を停めて、売店のオバチャンなんかが出入りする階段を登っていくの。
ハイウエイカードの自販機がオイシイんだ。これも金券ショップ
に持ち込めば定価のパーセント以上で買い取ってくれるからね。
結構な稼ぎになるんだよ。
もっとも、あの自販機は頑丈だからその場じ蝉間早には開かない。