泥棒・詐欺師犯罪例から考える防犯対策

実際にあった泥棒や詐欺のリアルな手口を犯罪者側の目線で物語風にご紹介。犯罪から身を守る手法を身につける参考にお役立てください。

ゲレンデに大金を持っていく客はいない。スキー場の駐車場を狙った車上荒らしにご注意を!

海岸線にクルマを止め、釣りに出かけた人間はすぐには戻ってこない。だから安全に車上荒らしが可能。おまけに車内には現金以外にも、転売に打ってつけの高級釣り竿が―。
目の付けどころが秀逸だが、かつての俺も、車上荒らしをしていたことがある。 
漁場は、スキー場だった。 
俺がスキー場の駐車場を狙っていた理由は2つある。

釣り客と同様、低リスクで車上荒らしができるというのがひとつ。これからスキーを楽しみに行くのだから、最低でも数時間はクルマに戻らない。 
さらに現金ゲット率がやたらと高いのも魅力だった。
 
これは、スキー客のスキー後の行動を考えればわかる。そう、温泉宿やホテルでの宿泊だ。
スキーを楽しむのに、わざわざゲレンデへその日の宿泊費用を持ち込む人間は滅多にいない。だから、現金が車内にある確率がめちゃくちゃ高いのだ。 
では、どんな手口で俺は車内に侵入していたのか。通常の車上荒らしのように、窓ガラスをブチ破る? 
いやいや、そんなことをすれば、逮捕のリスクがハネ上がるだけだ。
 
スキー場の車上荒らしはたしかに低リスクではある。だがそれゆえ、俺のような同業者はたくさんおり、毎年、各地のスキー場で被害が発生している。
したがって、スキー場の駐車場はスタッフがパトロールを頻繁に行い、警戒しているのだ。そんな状況で窓ガラスをガシャーンと割るのは自殺行為に等しい。
 
俺が得意にしていたのは、マイナスドライバーを使った手法だ。まずはクルマの●●にドライバーを差し入れ、グリグリと左右に回転させつつ力まかせに押し込む。すると、キーシリンダーが壊れ、ドアが開くという寸法である。所用時間はたったの20秒ほど。これならパっと見の不審者っぽさはかなり薄れる。
 
ちなみに、最近のクルマはスマートキーが主流だが、電池が切れた場合に備え、一般的なカギでも解錠可能な作りになっている。というわけで、どんなクルマにも必ず●●はあるのだ。とにかく、ドアが開けば、素早く現金をいただき、さっさと現場を離れる。 
1台のクルマからゲットできる額は平均で4万円ほど。もちろん車内に現金がゼロの場合もあるが、クルマの所有者がスノーボードをやる連中だったら
(最近のスキー場はそういう客がほとんどだが)、あきらめるのはまだ早い。
 
車内に予備のボードが見つかることが結構あり、買取ショップなどに持ち込めば1、2万円に、人気ブランドのボードなら2、3万になるからだ。その他ブーツやウエアなども転売可能なので、ワンセット揃ったら、そこそこのカネにはなる。
こんなことを1日に何度も繰り返していると、バカスカとカネが貯まり、最高で30万に達したことも何度かあった。1シーズンを通してなら、軽く300万は超えていたのではないか。
 
冬が訪れるたびに酒や女に散財できたのはいい思い出だが、ただ最後は結局、パクられたので、今となっては後悔しかない。
むろん、車上荒らしを一度やったスキー場にはしばらく近寄らないなど、警察にマークされないための注意はしていた。 
しかし、たまたま私服刑事の張り込んでいたタイミングで、うっかり仕事をしてしまったのが運の尽き。その場であっけなく取り押さえられたのだ。
では、最後にこれからスキー旅行に出かける人へアドバイスを。
車上荒らしに限らず、すべての犯罪者は逮捕につながるリスクを極力避けたがる。
だから、フロントガラスの内側など、クルマの目立つ場所にこんな張り紙をしておくといい。
「ドライブレコーダーで車内を24時間録画中」
あくまで重要なのは、車上荒らしを警戒してるぞと犯人にアピールすること。実際にドラレコを購入する必要はない。