泥棒・詐欺師犯罪例から考える防犯対策

実際にあった泥棒や詐欺のリアルな手口を犯罪者側の目線で物語風にご紹介。犯罪から身を守る手法を身につける参考にお役立てください。

競売なんてド素人に勝てるわけがない悪徳不動産屋の悪質な騙し手口

マシンガンのようにしゃべる氏(仮名、36才)は、競売で家
を買おうという人間を相手に金を編し取る競売グループに属する人物だ。

競売とは、借金のカタになった不動産を入札でいちばん高い価
格を付けた買い受け人に売って再建を回収する、栽判所の手続きのこと。
以前は、投機目的の不動産会社や暴力団関係者の独占場だ
ったが、ここ数年、

バブル期に購入した不動産のローンを払い切れず手放すケースが増加。

市価の7割の額でマイホームが買えると
あって一般の人たちの間にも広まってきた。

坂田氏の仕事は、簡単にいえば
カモとなる客の調達である。

競売物件の情報を公開している地方裁判所にでかけ、ターゲットを物色。
競売のプロフェッショナルたちに
混じって不安そうにファイルを覗
いている主婦やサラリーマンに近
づき「物件明細の見方、わかりま
すか」と声をかける。

流行のグレーのスーツをピシつ
と着こなした坂田氏が『不動産コ
ンサルタント』の肩背きが付いた
名刺を差し出しすとき、彼の仕事
が始まるのである。
ある種のブームになってるんだよ。

住宅情報誌にマイホームを手に入
れるなんて特集が組まれたり、
新聞にインフォメーションが載っ
たり。そういうのに乗せられて不
動産屋で買うのと同じような感覚
で手を出す一般人が増えてきてる。
俺の仕事はそういう﹇お客さん﹈
を探すこと。

まず地裁の閲覧室ってとこで
資料を見るから、そこで網を張る
んだ。
一目見れば業者か一般人かはわ
かるね。なんていうか、同じスー
ツを着てて雰囲気が違うんだ。
それにいまは不動産会社のヤシら
なんかいちいちコピー取らないで、
デジタルカメラで撮影してたりす
るからね。
いちばんの狙い目は、30代半ば
のフッーの主婦かな。そのぐらい
の年ならマイホームを目標にため
た貯金もある程度の額になってる
し、専業主婦には裁判所のこむず
かしい書類なんか理解しにくいで
しよ。
閲覧室には、所有者の名前や誰
が住んでるかなんてことが書いて
ある「現況調査報告書」と「物件
明細」そして最寄りの交通機関
はどうだとか書いた「評価書の
いわゆる3点セット」が置いて
あるんだけど、そんなの素人が見
たって具体的なことはわからない
のよ◎


例えば物件明細書の欄に賃借権
が「ある」って書いてあれば、賃
借入××が占有しているって併記
してあるからわかりやすいんだ。
けど「なし」って書いてあって
備考欄に「○○が賃借権を主張し
ているが正常なものとは認められ
ない」とか書いてある場合がある。
つまりそれは、きちんとした賃
貸借契約が交わされているわけじ
ゃないが、その家やマンションに
誰か住んでいるってこと。所有者
の親戚かなんかが居候してるのこ
ともあれば占有屋が住んでる可能
性もある。
あ、占有屋ってわかる?物件に以前から住んで
るように見せかけて「出て行って
もらいたいなら立ち退き料を出せ」
って脅しをかける人たちのことね。
昔からある代表的なヤクザのシノ
ギだよ。
一般の人はさ、裁判所が正常じ
ゃないって認めてるんだし、自分
は正式な手続きを踏んで物件を落
札して手に入れるんだから、そん
なヤシら裁判所が追い出してくれ
ると思うんだよね。だけど裁判所
は何もしてくれないの。
しかも書類には「占有者なし」
って書いてあっても、実際には金
目的のヤクザが住んでる場合もあるし。そんなの現地に行って調べれば
わかると思うだろうけど、おかしなことに何百、何千万の買い物を
するってのに物件の中には入れない決まりになっているの。
都会のマンションだったら、隣
の住人だって人が住んでるかどう
かなんて知らなかったりするから、
確かめようがない。


そういう説明をしてさ「奥さん、
貯金をはたいて買った家がもしそ
んな物件だったらどうされます?
立ち退き料を何百万もうっかけら
れたあげく、家の中をメチャメチ
ャにされるのが落ちですよ。ここ
は俺たちプロに任せませんか」っ
て勧誘するわけ。


最近、俺がカモを口説くときは
広島で起こった事件を引き合いに出すんだ。
その一戸建てには占有屋じゃなくて家の持ち主が住ん
でいたんだけどさ。

その人「長年住んだ家を明け渡すぐらいなら火をつけてやる」

ってホントに灯油をまいて火付けて、おまけに自分も焼け死んじゃったの。

どう、怖いでしょう。
この話をすればイチコロだね。
向こうから「ゼヒお願いします」
って頭を下げてくるよ。

裁判所でカモを捕獲したら、のまま事務所に連れていくんだ。
どんな物件を探していて、出せる資金はいくらぐらいか希望を聞くわけ。

実際、こうやって客の望みにあった物件を探して入札価格の相談に乗ったり、

占有者がいたらその交渉に当たったりする行業者ってのがいるんだよ。
資料を送ったら1件につき2千円、現地調査したら5千円、占有
者との交渉は実費とかね。で、最終的に物件の引き渡しができたら
落札価格の3%ぐらいを手数料として取ってる。
だから基本的には俺たちも代行業者なわけよ。ただ、いろんなオプションを無理矢理付けて引っ張れるだけ金を引っ張るうって方針だけどね。
希望条件だけじゃなく住所、氏
名、電話番号はもちろん家族構成
や、いま住んでる家とか貯蓄額。
さらにローンや借金の額も聞き出
すね。あと、いざとなったら金を
借りられそうな親戚はいるのかと
かもさ・
そこまで突き止めたら、後は仲
間に連絡して、希望に合いそうな
物件を用意する。
あのね、競売ってのは家を担保
に金を借りてた人間が、返せなく
なったから売りに出されるわけ。
金を貸してた金融会社が、もうこ
の人は返済の見込みが立たないか
ら家を売って少しでも債権を回収
したいって裁判所に訴えるんだ。
例えばこれ見て

2LDKのマンションの明細なんだけ
ど、見ると住宅金融公庫から19
00万、信用組合から2千万借り
て、その上でまたマンションを担保にして3千万借りてる。
競売の申し立てをするのはだい
たい第一抵当権者の金融公庫で、
これなんか3千万だった
物件なのに、裁判所がつけた最低
売却価格は1300万だ。
ってことは、1500万で落札
されても、第二抵当権を持ってる
信用金庫には全然金が回らないか
もしれない。まして3番目、4番
目の金融会社には一銭も入らない
ことになる。
もちろん、3番目の抵当権を持
ってる金融屋は、すでに3900
万も借金があるのに3千万も貸し
付けてるんだから、まともなとこ
じゃないよ。
おまけに9年も経ってるから、
そこそこ利子も取ってる。だけど
さ、一銭にもならずに3千万の貸
しがチャラになったんじゃ損した
気になるだる・
俺のグループにはさ、そういう
まともじゃない金融屋もいるんだ。
いわゆる十一とかの高利貸しがね。

金融屋グループは、不動産を担
保に金を借りている債務者が家を
売りに出したら要チェック、占
有屋に誘いをかける。
今の世の中、いざ買い手がついてもローンが返せるほどの値段で
は売れないのが当たり前。家は人
手に渡り、その上、ローンも残る
のではたまらないと、自己破産宣
告の道を選ぶ人が増えている。
破産すれば家は差し押さえ、競
売にかけられ、金融業者の出番は
なくなる。よってそうならないう
ちに先手を打つのである。
「お互い、このまま家を取られた
のでは元も子もなくなる。せめて
引っ越し代ぐらいは作るから、任
せてみないか」と。
ウンと言ったら、ソク、所有者
に日にちを偽った賃貸借契約書を
作らせ、占有屋を送り込む。
占有屋がいる物件を
カモにプッシュする
実際にその家に住むのは誰でも
いいんだよ。いざ立ち退いてほし
いってなったときにゴネてくれれ
ば、その辺のホームレスだってか
まわないし、他の借金取りに追わ
れてる債務者でもいい。賃貸契約
を交わした誰かが住んでることが
重要なわけだからさ。
裁判所が正式な賃借人かどうか
認定するとき、公共料金がその人
名義でいつから支払われているか
ってのを重要視する。

だから金融屋グループは、いか
に早く競売にかけられそうな物件
を探せるかってのが勝負なんだ。
よくさ、新聞に壷壁元にかけら
れた物件に暴力団が居座り、埜堅元
を妨害した疑いで逮捕した」なん
て出てるでしよ。
競売にかけられてから占有した
んじゃ遅いの。昔はそれで金が取
れたけど、いまは暴力団がからむ
と普察が厳しいからね。
金融屋の占有話が、俺の仕事と
どうつながるかというと、仲間の
金融屋が占有した物件が競売にか
けられたら、俺はそれをカモにプ
ッシュするんだよ。
もちろん、他の物件の情報も流
すよ。けど「ここは立地条件がい
いから予算は軽くオーバーしちゃ
いますよ」とか書いてありませんが行ってみたら柄の悪
い人たちが出入りしてましたから
占有屋の疑いがありますね」なん
て具合いに言っとくんだ。
なかなか思うような物件がなく
て客があきらめかけたときに喜具
借人がいるから多少の立ち退き料
がかかりますが」ってその物件を
ぶつけるわけ。
で、競売でこれだけの条件は見
たことないとか、これ以上の物件は出ないかも知れないとか、カモ
をその気にさせる。
だけど俺は「これがいいですよ」
とは言わない。最終的に決めるの
は客なんだよ。いろいろな物件の
中から自分で選んだ、って意識さ
せるのが大事。そうしないと、占
有者がゴネたときに、こっちのせ
いだってなっちゃうでしよ。
言ってることわかる?つまり
さ、俺たちのグループは、競売物
件を買うヤシと、競売にかけられ
たヤシの両万から金を取るわけよ。


サクラの入札者を派遣、
開札現場を盛り上げる
﹇お客さん﹈が「この物件を買い
たい」って言ってきたら、第一段
階クリア。入札期日までに保証金
(裁判所が決めた最低売却価格の
2割)を振り込ませ、入札価格を
決めるんだ。
狙う物件には怪しげな賃借人が
いるんだから、まともな連中は入
札しないよね。カモが落札するの
は目に見えてる。
けど、開札ってのは、入札した
人が一同に集まったところで裁判
官が1つずつ書類を開封して、い
ちばん高い金額をつけた人の名前
を呼んで「落札しました」って宣言するわけ。
そんなところでさ、1人しか入
札してなかったら落札しても有難
みがないでしよ。だから仲間たち
が適当に入札して雰囲気を盛り上
げるんだよ。どうせ、保証金は落
札しないと返ってくるんだしさ。
俺は客と並んで開札を待つんだけど、入札者が何人もいると客は
緊張するよ。おまけにさ、サクラ
の中にはガラの悪いヤシも混じっ
てるわけだから。
で、落札者として自分の名前が
呼ばれると、もう大感激。「あり
がとうございました」って俺の手
を握って泣き出す人もいる。

落札して「最高価買緊申出人」
になったら1カ月以内に代金(入
札価格から保証金を引いた額)を
全額現金で納入。
それを確認した裁判所が物件の
名義を書き換え、晴れて落札者の
所有物となるのである。
が、裁判所から物件を引き渡さ
れたからといって、すぐに落札人
が住めるわけではない。前の持ち
主や賃貸人が居座り、不当に居住
する権利を主張したり示談にも応
じてくれないなどの場合があるか
らだ。市価の3割安程度でマイホーム
を手に入れた﹇お客さん﹈はもう
俺を全面的に信用しちゃってる。
だから「別料金になりますが、住
んでいる方への立ち退き交渉も担
当しましょうか」って聞けば、例
外なく頼んでくるんだ。
金が取れるかどうかは、ここか
らが腕のみせどころ。いろいろや
り方はあるんだけど、基本は賃貸
人がゴネて立ち退き料を要求して
る、ってパターンで口説く。
まず手始めに、客の自宅に「オ
レを追い出してみろ。仲間が黙っ
てねえぞ」なんて電話をかけさせ
たり、家の回りをガラの悪いヤシ
にウロウロさせたりしてさ。
その一方で俺はこまめに連絡を
入れて、あくまで親身になって交
渉に当たる善人を演じるわけ。
で、客がどんな事態なのか身に
しみてわかったころに金の話を切
り出す。「住んでる人のバックに
はヤクザがいるらしい」って。
もちろん、正式に認められた賃
貸人だから、それなりの立ち退き
料はもらえるわけ。それにいくら
プラスアルファを加えるかは、カ
モの懐具合をみて決める。最低で
も200万はもらわないとねえ。
一応、裁判所に申し立てて引き渡し命令を出してもらい、最終的
には強制執行という手もあるって
ことは言っておいた上で「相手は
何をしてくるかわかりませんね。
強制執行の費用は自分持ちになる
から、どうせなら立ち退き料を払
って穏便に示談って形に収めるの
がいちばんでしょう」って話をま
とめるんだ。
これでカモが金を出してきたら、
もうひと頑張り。場合が場合でし
たので顧問弁護士に図りまして、
なんて弁護士料だとか交渉特別割
増とか口実を設けて、落札価格の
手数料を取る。
コツはさ、俺はあくまで客の立
場で精いっぱい頑張りましたって
態度なのよ。4,500万取って
も坂田さんにはよくしてもら事と
なんて感謝されるぐらいじゃなく
ちゃ。
いや、実際にいるんだよ。いま
だにお中元とお歳暮送ってくるお
めでたい人がさ・
でも、そんな客ばかりじゃない。
中には立ち退き料など払えない
から強制執行してくれ」っていう
客もいる。
そういうときは、引き渡し命令
が出てから執行日までの間に賃借
人に「執行抗告」ってのを出させる。

これは、強制執行に異義あり
って申し立てなんだけど、裁判所
は要件さえ揃ってれば執行を引き
延ばすから、それなりに効果は出る。
何度もやれば落札者はジレて、仕
舞には金を払うって寸法だよ。
いつだったかな、半年ぐらい粘
っても、どうしても立ち退き料を
払いたくないって客がいてさ。も
ちろん手数料は取ったんだけど、
強制執行かけられちゃって。
後で話を聞いたら、怒った金融
屋はその家を明け渡すときに全部
の配水管にセメントを流し込んだ
って。おまけに、床を抜くわ壁を
壊すわ、メチャクチャにしてさ。
住まわせてたのがホームレスだ
ったから、どうせ足がつきっこな
いって無茶やったらしい。
確かマンションの4階か5階だ
ったから、排水管を直すだけで相
当かかったんじゃないかな。大人
しく立ち退き料を払ってればよか
ったのにねえ。

しかし一般人の客がそこまでう
まくハマるのは、そうたびたびあ
ることではない。グループの金融
屋が占有した物を、総会屋が落札することも多い。
安く手に入れた物件をリフォー
ムし、相場で売ればそれなりの利
益が出る。そのため、競売物件専
門も存在するのだ。
ところが、プロの不動産屋に立
ち退き料の請求は通用しない。誰
が住んでいようとビジネスと割り
切り、まったなしで洲き渡し命令
を批判所に叩し立て、強制執行を
かけてくる。
実はこんなときにこそ

元の所有者本人が住んで
る場合は、そいつから金を引っ張
ることもあるんだよ。借金に負わ
れて行く先もなく、もう強制執行
を待つしかないって立場のヤシら
からね。
金融屋は債務者の情報を持って
るから、そういう立場の人間がい
るとわかったらコンタクトを取る
わけ。で、「あと1年は住めるよ
うにしてやる」なんて近づいてア
ドバイスをしてやってさ、結局、
不動産屋が出した立ち退き料の半
分をピンハネするのよ・
不動産屋はさ、ホント簡単に強
制執行かけてくるんだ。ねえ、そ
れが実際にどういうことか知って
る?家に人が住んでるのに、カ
ギ屋呼んでドアをコジ開けて有無
を言わさず乗り込んでいって追い
出すんだ。
人夫を頼んで家の中にある荷物をどんどんトラック
に積んで最終的にはコンテナに詰
め込むんだけど、もう、体の不目
由な老人がいようが泣こうがわめ
こうが関係なし。人間のすること
じゃないよな。
だからさ、俺らはそういう人た
ちにもアドバイスするわけ。家を
競売にかけられたらできるだけ居
座って、それで強制執行になった
ら執行日の直前に引っ越し先を契
約しな、って。
強制執行ってのは、執行の申し
立てをした人間、つまり落札した
不動産屋なんかが費用を払うんだ
けど、出ていく側からコンテナ
に詰めた荷物をどこそこへ運んで
くれ」なんて言われたら運ばざる
を得ないわけよ。
ってことはさ、これをウマク利
用すれば引っ越し代が浮くんだよ。
もちろん俺たちは浮いた金を計算
して、その半分をアドバイス料と
してもらうんだけどさ。とにかく
取れる金は全部取るの。