泥棒・詐欺師犯罪例から考える防犯対策

実際にあった泥棒や詐欺のリアルな手口を犯罪者側の目線で物語風にご紹介。犯罪から身を守る手法を身につける参考にお役立てください。

ゴルフクラブ泥棒の手口から学ぶ窃盗の防犯対策

その道30年の泥棒で、空き巣やら万引きやら、とにかく盗みのことなら何でもござれというオッサンがいる。
何気なくその男に「素人の俺にでもできる、カネになりそうなシノギないスか?」と尋ねたところ、即座に男は「あるよ」と答えた。

以下に、彼から聞きだした話の全容を紹介するとしよう。
そのシノギとはゴルフクラブ窃盗だ。

高価なものなら1本15万以上もするゴルフクラブは換金性がすばらしく、泥棒業界でも専門に狙う輩が大勢いるんだそうな。


盗みの手口は2つある。まずひとつ目は、ゴルフ場を舞台にしたものだ。ゴルフ場には、客に有料でクラブセットの貸し出しを行っているところが多い(料金は3、4千円程度)。

しかもそこそこ格調の高いゴルフ場ならば、貸しクラブも最新のものを取り揃
えているため、たとえ中古でもセットで転売すれば、15万〜20万のカネになるわけだ。
犯行の流れとしては、偽名でコースの予約を入れておき、プレイ当日、借りたクラブをパクってトンズラをかますといういたってシンプルなものだが、最大の難関は、クラブをレンタルする際、身分証の提示を求められることだ。

これをかわすには、ちょっとした芝居が必要になる。受付で免許を忘れたフリをし、スタッフにこう申し出るのだ。
「家が遠いから取りに帰ってるヒマがなくてさ。自宅の妻に免許証のコピーをここにFAXさせるから、それでカンベンしてよ」
強気経営だったバブル時代ならいざ知らず、現在のゴルフ場はどこも客足の減少に頭を悩ませている。そのため少しでも客を逃すまいと、これしきのことなら問題なく融通をきかせてくれるのだ。

ちなみに、コンビニから免許をFAXするのは仲間の仕事で、もちろんその免許も偽造したものだ。

特に凝った細工が施してあるのではなく、実際の免許にニセの住所や氏名、免許番号を書いた紙を張ってコピーしただけのC級品だが、ゴルフ場のスタッフをダマす場合はこれで十分らしい。

言い方を変えると、完成度の高い偽造免許を用意できない場合は、この方法以外に貸しクラブをパクる術はないそうな。
無事に身分証の壁をパスしたら、プレイの途中、公道からもっとも近いホールで仲間の車と合流。そのままとっととオサラバするまでだ。

ゴルフクラブのパクリ術その二は、ゴルフショップの盲点をつく手口。
ゴルフショップには定期的にゴルフメーカーの営業マンがやってきて、新製品の搬入を行っているが、ほとんどの場合、彼らはひとつの特徴的な行動を取るらしい。ショップを訪れると、すぐに商品の搬入に取り掛かろうとはせず、まずはダラダラと店長とくっちゃべることから始めるのだ。

おそらく業界の慣例なのだろうが、短くて20分、長ければ1時間以上、お気楽に茶を飲んでいることが多々あるわけだ。で、その間、商品であるドライバーやパターなどは営業車に積んだまま。

しかもショップが郊外の大型店だったりすると、広い駐車場に客の車もまばらという非常に無防備な状況となるわけで。
もはやクドクドと説明する必要もないだろう。車上荒らしをやってお宝をごっそりと持ち去ればいいだけなのだから。前述したとおり、人気ブランドの新品クラブは1本だけでもべらぼうな値がつく。この話を教えてくれたオッサン泥棒によれば、1回の盗みで300万以上のカネを手にしたというが、あながち大ボラとは思えない。
もちろんこんなことを実行する勇気もないし、そもそもやりたいとすら思ってない。皆さんも知識だけにとどめておくのが賢明だろうしゴルフ関係者の方は注意して頂ければ幸いだ。