泥棒・詐欺師犯罪例から考える防犯対策

実際にあった泥棒や詐欺のリアルな手口を犯罪者側の目線で物語風にご紹介。犯罪から身を守る手法を身につける参考にお役立てください。

家電量販店窃盗犯の手口

窃盗の罪でこれまで何度もパクられてきた俺だが、そろそろ刑務所への出入りを繰り返すのは体力的、精神的にもツラくなってきた。なので、今後はまっとうな生活を送ろうと思っている。
けじめを付ける意味で、俺の手口を明かすとしよう。

よくやっていたのは転売目的の万引きで、家電量販店を主なターゲットにしていた。家電は一般的に単価が高い。同じリスクを背負うなら、できるだけ高価なものを狙うのは当然のことだ。
とはいえ、家電量販店は防犯意識がかなり高い。防犯カメラに盗難防止ゲート、店によっては、万引きGメンを配置して、客の挙動に目を光らせてるところもある。
そんな状況下で、盗みを働くのがいかに難しいかは言うまでもない。
しかし、そんな家電量販店にも死角はある。鉄壁の警備システムが何ひとつ作動していない絶好のタイミングが。
ヒントは、新規オープンする店だ。
家電量販店が新たな街で商売を始める場合、当然ながらまずは店を建造する。箱が出来上がれば、今度は内装やエスカレータやエレベータなどの設備工事がスタート。
で、オープン1週間ほど前にようやく店内の棚に商品が陳列され始める。
こういう時期になっても店内はまだ工事業者や内装業者、電気や水道、ガス業者などが多く出入りしていて、おまけに店舗の関係者もウロチョロしている。
さながらどこぞの学園祭のごとき状況だ。ここまで説明すれば、察しがつくだろう。そう、俺の使っていた手口とは、店舗に出入りする業者になりすまし、スキを見て商品をパクるというものだ。
もちろん、各出入り業者は誰が何人、現場で作業するのか、事前に名簿のようなものを提出しているだろうが、警備員が出入り口でチェックしてるような場面は一度もお目にかかったことがない。作業効率が落ちるからだろう。
そんなわけで、出入り口は事実上のザル、テキトーな作業着を着てさえいれば、誰にも怪しまれず、あっさり中に入ることができた。
ここまで来れば、あとは商品を外に運び出すだけである。
何のことはない。ノートパソコンやロボット掃除機など、高価で持ち運びの簡単な商品を手に取り、素知らぬ顔で店の外へ出ていくだけだ。
とはいえ、途中で店の関係者に呼び止められることも普通にあるが…。
「あ、ちょっと。それどこに持っていくの?」
こんなときは、さらっと答えるようにしていた。
「なんか、陳列する商品を別のものに変えるみたいで、倉庫に持ってってくれって頼まれたんスよ。ところで倉庫ってどこですか?」
なにせ現場は混沌としており、特に店のスタッフはオープン前の準備に追われて大わらわだ。まず不審に思うことはなく、「ふうん」と去っていく。
ここから先の行動は現場のユルさによる。
誰も俺のことを見てないなーと感じれば、商品を何個もパクるだけだし、逆に複数の関係者から「それ、どこに持ってくの?」と聞かれたら、ひとつだけパクって、オサラバするに限る。新規開店を間近に控えた家電量販店関係者の皆さん、作業着姿の不審者にはくれぐれもご用心を。