泥棒・詐欺師犯罪例から考える防犯対策

実際にあった泥棒や詐欺のリアルな手口を犯罪者側の目線で物語風にご紹介。犯罪から身を守る手法を身につける参考にお役立てください。

コインロッカー荒らしの盗難の手口

ロッカー荒らしに遭った。新品のノートパソコンやタブレットなどを盗まれて気分は散々だ。
 

同様の手口はいろんなところでも悪用されてるらしい。注意喚起のつもりでコトの顛末をお知らせしよう。
 

所用で神奈川県の川崎市に来ていたその日、繁華街の一角でコインロッカーを見つけた。こいつはちょうどいい。そろそろ昼時だし、荷物を預けてメシ屋でも探すか。
 

パッと見渡した感じ、どのロッカーにも鍵が刺さっておらず、鍵穴もついてない。どうやら近ごろ増えだしたレシート式の新しいロッカーのようだ。
このタイプのロッカーは、カネを入れるとQRコードやバーコードの書かれたレシートが発行される。つまりそれが鍵の代わりとなり、荷物を取り出す際は、センサーにレシートをかざせばロック解除になる仕組みだ。同様のロッカーは俺の地元のJR駅にもあり、何度か使ったことがあるので勝手はわかっている。
 

えーと、たしか先に荷物をロッカーに入れてから、機械の操作をするんだっけか。
あらためてロッカー群に目をやる。各ロッカーのトビラには施錠ランプが点灯しているものと無点灯のものが2種類あるのだが、おかしなことに、どちらのトビラも鍵がかかっていて開かない。ん〜どういうわけだ?
 

そのとき視線の片隅に何かが。
見れば、施錠ランプが点滅しているロッカーがあり、わずかにトビラが開いている。なあんだ、ランプがピカピカ光っているのが未使用なのか。
 

勝手に納得してロッカーに荷物を放り込み、トビラを閉めた。つづいて操作盤へ移動し、料金を支払おうとしたのだが、ふと操作方法の書かれたパネルを読んで違和感が。
それによると、このロッカーは使用中、未使用中に限らずトビラにロックがかかっているらしいのだ。
 

正しい使用法は、まずどのロッカーを使うか決め(操作盤にロッカー番号を入力)、カネを投入し、レシートを受け取る。そこではじめてトビラのロックが解除され、荷物を入れられるようになるらしい。
 

え、じゃあさっきの点滅ランプのロッカーはなんでトビラが開いてたんだ?
あわてて荷物を取り出そうとしたところで、カチッと音が鳴り、トビラにロックがかかった。鍵となるレシートを発行していないので当然、開ける術はない。
すぐに管理会社に連絡し、状況を伝えた。開いてるロッカーに誤って荷物を入れたら、勝手に鍵がかかってしまったと。
 

先方によれば身分証の提示とロッカーの荷物の中身を言い当てられたらすぐに鍵を開けてくれるそうだが、現地にスタッフが到着するまで30、40分ほどかかるという。 

そこで近くの喫茶店でしばし時間をつぶして戻ると、すでにスタッフらしき人物がロッカーの前に立っていた。
で、もろもろの手続きを経てついにロッカーの鍵が解除されることになったのだが…。
荷物は消えていた。パソコンなど大事なものを入れていたバッグがキレイになくなっていたのだ。
うろたえる俺にスタッフが言う。
「たしか利用前からロッカーが開いていたって言ってましたよね。だったらこれって、最初から仕組まれていた可能性がありますよ」

スタッフによれば、これはコインロッカー荒らしの手口ではないかというのだ。
犯人は、まずロッカーに金を入れて鍵となるレシートを取得。その後トビラに何か物を挟ませ、閉まらないような細工を施してからその場を離れる。
そこに何も知れない俺が現れた。まんまと犯人の用意したロッカーに荷物を入れ、トビラを閉めたところで自動ロックがかかる。
どこかで様子を伺っていた犯人は、俺が喫茶店に消えたのを見て、すかさず手持ちのレシートでロッカーを開け、荷物をパクった。これが全貌だ。
結局のところ、この手口のキモは、このロッカーの使い方が一般的なレシート式コインロッカーとは違う点にある。料金投入前に荷物を入れる、そして未使用ロッカーはロックされていないという利用者の思い込みを犯人がうまく利用したわけだ。
被害届を出した警察の話では、このタイプのロッカーは全国にもたくさん普及しており、同様の被害が多発しているという。