泥棒・詐欺師犯罪例から考える防犯対策

実際にあった泥棒や詐欺のリアルな手口を犯罪者側の目線で物語風にご紹介。犯罪から身を守る手法を身につける参考にお役立てください。

エアコン室外機の盗難事件が頻発する理由と防犯対策法

ご存知だろうか。ここ最近、エアコン室外機の盗難事件が頻発していることを。
 
目的は何か?
 
ヒントは、銅の価格が2020年の後半から値上がりし続けていることだ。具体的には、800円/㎏が千円/㎏以上になっている。
 
さらに室外機には、銅がふんだんに使われているといえば、どんなに鈍い人でもピンとくるだろう。
 
そう、窃盗犯の狙いは銅。室外機から取り外し、金属スクラップ業者に売りつけているわけだ。
 
とはいえ、室外機の銅はせいぜい3㎏なので、1台につき儲けは3千円程度。つまり室外機の盗難は、食い詰めた底辺ドロボーしか手を出さない、ハイリスク・ローリターンなシゴトなのだ。俺の知人にも銅が値上がりするたび、室外機をパクっている悪い人間がいる。
 
ヤツの本業は廃品回収業者なのだが、その手口はその辺の室外機をかっぱらうという単純なものではない。もっと悪質だ。
 
以前、ヤツから聞いたことをそのままみなさんにお伝えしよう。まず、ヤツは深夜の住宅街に出向き、各家庭の室外機にある細工を施す。
 
室外機のカバーを外すと、そこから金属管が2本出ているのだが、細い方をペンチで潰し、またカバーをもとに戻すのだ。ちなみにカバーの脱着は簡単に
できる。
 
どういう理屈なのか、この状態でエアコンを作動させた場合、またたく間に壊れてしまうらしい。
 
おまけに修理のために呼ばれた電気屋は、お手上げになるうえ、その故障を不審に思うことがない。きっと金属管が人為的に潰されているなど夢にも考えないからだろう。
 
とにかく、こういった作業をだいたい4軒に1軒の割合で行っていく。
 
これは、のちに疑いの目を向けられないための防衛策である。
あたり一帯のエアコンが軒並み壊れれば、あまりにも不自然だからだ。真新しい室外機をスルーするのも同じ理由らしい。
 
完了すれば、また別の住宅街に行き、同様の作業を繰り返す。ここまでが準備段階だ。 
準備が済んだら、いよいよ〝収穫〞がスタート。
 
数日後、今度は廃品回収業者として住宅街に戻るのだ。トラックをゆっくり走らせながら「ご家庭で不要になったテレビ〜」と例のアナウンスを鳴らして。
 
もちろん、ヤツの狙いは、新しくエアコンを買い替えた家庭で眠っている、古い室外機だ。
 
とはいえ、家電量販店などでエアコンを買い替えると、壊れたエアコンと室外機を無料回収してくれる場合もあるため、すべての人間がヤツに声をかけてくるわけではない。
 
が、ヤツのような廃品回収業者は、数千円ほどの料金を払えば、室外機やエアコン本体だけでなく、家庭にある他の不用品もまとめて回収していくため、
意外と利用者が多いのだ。

こうしてヤツは、廃品回収業務の増加と室外機の回収で、安全かつダブルで私腹を肥やしているのだ。
 
さらに廃品回収のパターンでは、室外機だけでなく、エアコン本体も同時に入手できるため、室外機オンリーの窃盗と比べて、儲けの単価も上がる。
 
なぜならエアコン本体にも1〜2㎏の銅が使われているからだ。
 
この夏も、ヤツは夜な夜な住宅街に現れ、せっせと室外機の金属管を潰して回っている。
こんなバカから大切なエアコンを守るには、センサー型の防犯ライトがもっとも効果的だ。
室外機の近くに設置しておけば、突然の光に面食らってスタコラ逃げ出すことだろう。