図書館というのは、悪い人間にとって宝庫のような場所だ。珍しい郷土史、明治の文豪の初版本など、古書店に持っていけば何万、何十万の値がつく蔵書がゴロゴロ転がっているのだから。
むろん図書館もその辺は心得ている。そういった稀少性の高い本は貸し出しを不可にしたり、なおかつ万引き防止用のICタグを取り付けたりと、一応の対策は講じているものだ。
が、ドロボウにとって、その程度の防御はノーガードに等しい。
いや、そもそも図書館は公共施設であるため、商店などと比べて防犯意識が著しく低い。
その点がもっとも顕著に現れているのが、トイレだろう。
ごく普通にトイレ窓を開閉できる図書館の多いこと多いこと。つまり、ドロボウは盗みたい本をトイレの窓から外へポンポン投げて後で回収するだけで仕事が完了してしまうのだ。